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タンポポの詩 (2019.7月 加筆、修正)ブログ童話館アートメルヘン

 
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タンポポの詩 ブログ童話館アートメルヘン

タンポポの詩


なぜ 
そんなに
周りばかり気にするの


周りばかり気にしていても 
息が詰まるだけさ


さあ 
顔を上げてごらんよ


きっと 
なにかが見つかるはずさ


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 タンポポの詩

その1「雨の中の二人」

 

タンポポの詩 ブログ童話館アートメルヘン

 遠くに見える山の頂から
満月が昇るころ、

丘の上では、
虫たちの音楽会が
開かれていました。

タンポポは、
とても幸せな気分でした。

だって、
どの虫たちの演奏もすばらしく、
とても良い音色だったからです。

 タンポポには、
ある予感がありました。

その、
すっと伸びた茎の先には、

タンポポの子供たちが
魔法の傘につかまり、

今か今かと旅立ちの時を
まっていたのですから。

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そして、ついに
その時がやってきました。


タンポポの体を、
やわらかな風がそっと揺らせたのです。


子供たちの持った魔法の傘は、
フワリと風に乗り

それぞれの方向へと
旅立って行ったのです。

 ある者は、
空高く飛んで行きました。

そしてある者は、
月明かりに照らされて、
下の街へと向かったのです。

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 私は、風に乗り
丘の下の街へとやって来ました。

そこには、美しい声で歌う
少年がいると虫たちの話で
聞いていたからです。

 その少年は、街の広場の
噴水の近くで小さな
竪琴を
弾きながら歌っていました。

私は、その少年のそばにゆっくりと
舞い降りました・・・。

 少し栗色の
軽くウエーブのかかった長い髪。

まるでエメラルドのように輝く瞳。

そして透明な歌声・・・。

そのどれもが、私の好みに合いました。

私は、その少年を
すぐに気にいったのでした。

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しかし、少年の歌に
耳をかたむける人は、
ごくわずかでした・・・。

人間たちには、
少年の歌は美しく
聞えないのでしょうか。

少年の足元には、
くすんだ色のコインが
二三枚転がっているだけでした。

でも少年は、
そのコインを大切そうに
ポケットにしまうと
帰っていきました・・・。

 次の日も少年は、
その場所にやって来て歌いました。
その次の日も、そのまた次の日も。

しかし、ほとんどの人が、
ただ少年の前を
通り過ぎて行くだけでした・・・。

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少年の歌う場所の、
道をへだてたむかいに
小さなパン屋がありました。

そのパン屋は、母親と少女が 
二人で店をきりもりしていました。

少女は、とても可愛らしく、
そして、
とてもよく働き母親の
仕事を助けていました。

 そんな少女が、
時たま仕事の手を休めて
道をへだてた広場を
じっと見つめている事がありました。

そこに、
少年の姿があったからです・・・。

道をへだてたパン屋にも、
かすかにではありますが
少年の歌声が聞えてきたのです。

少年は、いつも家に帰る前に、
いちばん安いパンを
少しだけ買って帰りました。

たまに少年の姿が見えない日には、
なんとなく少女にも
元気が
ないように見えたのでした・・・。

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 ある日の事です。

昼間でていた入道雲が、
まるで命を持った生き物のように
動き出して
厚く空をおおうと、

ポツリ、ポツリと雨のしずくが
落ちてきました。

雨が、少年の髪を
ぬらし始めました。

雨は烈しく、そしてだんだんと
強くなり少年の体を打ちました。

広場を行き交う人々は、
足早に雨をさけて広場から
散っていきました。

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遠くに聞こえていた雷鳴が、
徐々に街の広場にも
近づいてきました。

大きな雷鳴の音に、
少女は思わず耳をふさぎ
目をつぶりました・・・。

そして、そっと顔を上げた
少女の目に少年の姿が
飛び込んできました。

少年は、この雷鳴と雨の中でも
歌い続けていたのです。

まだ、いつもほどのコインが
集まらないためでしょうか?

それとも、
自分の歌が認められない
鬱屈した気持ちのせいでしょうか?

とにかく少年は、この雨の中でも、
いつものように歌い続けていたのです。

その姿を、じっと見つめる
少女の心の中に、何か熱いものが
込み上げてきました。

 少女は、母親が止めるのもきかずに
雨の中へと駆け出して行きました。

少女は、少年の横へ駆け寄ると、
少年を、じっと見つめました。

少年と少女の顔を、
いくすじもの水滴が流れて
落ちて行きました。

時おり、稲光が光り、
暗闇の中に二人の姿を
浮び上がらせました。

雨と風は二人の体を打ち、
そして揺らし続けました・・・。

 しかし・・・。

空をおおう雲は風に押し流され、
雨もいつの間にか雨は、
あがりました・・・。

そして空には、
美しい虹が輝いていました。

二人は、お互いの心の中にも、
美しい虹が架かったように
思いました・・・。

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それから、しばらくして・・・。

少女は、何時ものように歌う
少年の横に咲くタンポポの花を
見つけました。

少女はその中の、
綿毛の付いた茎を一本抜き取ると

ふうーっと息を吹きかけました。


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すると、タンポポの綿毛は、
風に乗りどこまでも、どこまでも、

空高くそれぞれの方向へと、
旅立っていったのでした・・・。


きっとタンポポたちは、
自分たちの見た歌の上手い
少年と少女の話を、
どこかの街やどこかの丘で、
仲間たちにお話しすることでしょう。


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 タンポポの詩 

その1「雨の中の二人」
(2019.7月 加筆、修正)

終り


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